ガイは朝のトレーニングを終えて公園のベンチでくつろいでいた。
空は青く晴れ渡り、並木の新緑はみずみずしい。
―――気持ちいい日だ。
ガイは姿勢よく背筋を伸ばし、大きく息を吸いこんで胸を膨らませた。
その時、ふと背後に気配を感じ、瞬時に息を止めて頭をそちらへ動かすと
「よう!ガイ!」
気さくに片手をあげてあいさつする銀髪の男が立っていた。
この男はいつも気配が薄い。
「・・・カカシか。」
永遠のライバル兼同僚の見慣れた顔を確認して、
ガイは再び気を緩めて息を吐きだした。
カカシはガイに歩み寄って背後に立つと身をかがめ、
それとない自然な流れを装って右腕をガイの肩に回した。
「さし入れだw」
そういうと、カカシはにこりと笑い、
スパイシーな香りを放っている茶袋を左手でさし出した。
やたら近い距離と微妙な違和感を本能的に感じとったガイの顔に、
いぶかしげな表情が浮かぶ。
「お前が差し入れか??・・・珍しいな。」
「まっ、たまにはね。」
カカシはそう言いながら茶袋をガイの膝に置くと、
ベンチを回り込んでガイの横に座った。
そして、迷うことなく人の膝の上でごそごそと茶袋を開け始めた。
「・・・差し入れじゃないのか?」
ガイは、茶袋からカレーパンを1つ取りだしたカカシをみて
不思議な顔をして尋ねた。
―――こいつは読めない。そーゆー所もクールで悔しい
とガイはよく思う。
「いやーオレも腹がすいてねぇ。心配するな、沢山あるから。」
「あぁ・・・そうか。なら遠慮なく頂くぞ!!」
ガイもカレーパンを取りだすと大きな口でかぶりついた。
カカシは、日頃の早食いが嘘のようにゆっくりとカレーパン口に入れながら、
心の中でほほ笑んだ。
―――ガイは側にいるだけで、いつでも暑苦しくて騒がしいなぁ。
カカシはガイの濃厚な存在感に対応できるし、
それがない環境にもおそらく慣れることができるだろうが
―――やっぱり・・・いないと味気ないな。
カカシは現実と思考の狭間で漂うように生きている。
だが、勝負だなんだでガイが姿をあらわすと不思議と今この瞬間に引き戻される。その目の覚めるような現実感と活力を、カカシはえらく気に入っていた。